名越切通(なごえ きりどおし)は、まるで中世の山道に迷い込んだような雰囲気の古道です。
JR横須賀線の線路や交通量の多い道路など、いくつかのトンネルが通る丘陵の尾根にある道で、住宅地も近いのですが、喧騒はほとんど伝わってきません。道筋の削られた岩肌や苔むした巨石を目にすると、ここを行き来した様々な身分職業の人々がいたことが、時間をさかのぼって想像できます。
名越切通は、源頼朝が鎌倉に幕府を開く前からあった古い道であるといわれ、ヤマトタケルが東征の際に通った道だという説もあります。
鎌倉と三浦半島を結ぶ重要な道路として、明治時代まで修築されながら活用されていました。
切り通しは、おもに中世、鎌倉が政治経済の中心だった時代に整えられました。人や物の流れを良くするだけでなく、鎌倉に外敵が侵入するのを防ぎ、戦闘を有利にするための工夫も施されているのだそうです。
軍馬が走り抜けられないように道の真ん中に置き石が据えられていたり、武装した大群が簡単に通れないように鋭角に道筋が曲げられていたり、壮絶な合戦場面の背景になりそうな景色が出現します。
古い歴史を持つ道なので、地震などの災害によって崩れたり改修されたりしているそうです。
近年、逗子市の行った発掘調査によると、江戸時代中ごろに道幅が大きく変わったところもあり、鎌倉時代そのままの姿形が保たれているわけではないそうです。それでも、歩いているうちに、時間が逆行して岩陰から騎乗した鎧姿の坂東武者が現れそうな…そんな雰囲気を保った場所です。
名越切通のほぼ真下には、日本で有数の心霊スポットとしてNHKでも紹介されたことがある小坪トンネルが通っています。実際、近くに斎場がありますし、中世の墳墓群「まんだら堂やぐら群」はこの切通しの中にあったりするので、心霊スポットとして注目されちゃうのは仕方ないかもしれない。
それに、まぁ小坪トンネルができたおかげで、名越切通しが舗装されたりすることなく古道らしく保たれてるんですよねー。
とにかく、実際に訪れてみるとよく保全され、整備されている史跡スポットですからね! ちょっぴりでも中世鎌倉の歴史や成り立ち、主要人物なんかをチェックしていくと、幽霊どころか歴史の一部分が見えてきますよー。ほんとに!!