2019年10月5日、6日、『旧華頂宮邸 秋の施設公開』が行われました。
▲映画やテレビドラマにもたびたび登場するロマンチックなお屋敷です。旧華頂宮邸は、昭和の始めに建てられた洋風住宅建築で、国の登録有形文化財(建造物)に指定されています。鎌倉市が保有し庭園として外観のみ公開しているのですが、春と秋の年に2回、各2日間、建物内部の公開が行われています。
▲公爵ご夫妻が住まわれていた頃を偲ばせる、スチーム暖房用の大理石のマントルピース。この建物は昭和四年(1929)の春に、華頂博信侯爵がご自身の住まいとして建てたものです。南面に幾何学的なフランス式庭園が広がり、 生活空間らしいこじんまりとした佇まいの中に優雅な雰囲気を残したお屋敷です。
▲ベランダのある2階の部屋。南向きの窓から明るい光が入ります。
▲北向きの窓は、緑を背景に美しいシルエットが浮かびます。
▲畳敷きのお部屋も!
▲窓から見える銅板葺きの屋根。華頂侯爵夫妻がここに住んだのは数年のみで、その後はたびたび所有者が入れ替り、壁紙や照明器具などは建築当初とは変わっています。住む人がいない時期もあり、一時は建物の老朽化が進んで取り壊しが検討されたこともあったそうです。
現在、私たちがこのお屋敷のお庭や邸内の様子を楽しむことができるのは、『宅間ボランティアの会』の方々の活動のおかげです。旧華頂宮邸がある宅間谷(たくまがやと)にお住まいの皆さんが中心となって、施設の手入れや管理などを行うとともに、鎌倉市と協力して、施設公開や季節イベントを行っています。
▲2階からフランス式庭園を見下ろします。
▲凝った窓枠が庭の緑を引き立てます。
▲谷戸の奥、森の中のお屋敷といった趣きです。施設公開の日には、ボランティアの方によるコーヒーのサービスがあります
爽やかな風が通る広間で、とびきりのコーヒーブレイクしました
旧華頂宮邸は、竹の庭で知られる報国寺の奥にあります。
▲真夏にはあまり見かけなかった蝶たちが、秋風とともに姿を現していました。宅間谷戸(たくまがやと)と呼ばれる鎌倉ならでは谷戸の景観がよくのこる地域で、かつては全域が報国寺の寺領だったところです。閑静な住宅地(…というよりお屋敷町)で、古くは平安時代後期から南北朝時代まで続いた絵師・絵仏師の流派・宅間派の芸術家たちが住み、旧華頂宮邸が建った昭和の初め頃には、川端康成、林房雄といった近代日本を代表する小説家の住まいもこの地域にありました。
自然の中に、やぐらなどの古くからの人工物がとけ込んで、鎌倉が歴史を持つ “古都” であることを感じさせる景観を保っています。
旧華頂宮邸のお庭は、春は桜やツツジ、初夏に紫陽花やバラ、盛夏に百日紅、深秋の紅葉も美しいところです。報国寺を訪れたときには、少し足を伸ばして旧華頂宮邸も訪ねてみてください。