一条恵観山荘(いちじょう えかん さんそう)は、金沢街道沿い、浄明寺バス停から徒歩2分ほどのところにあります。江戸時代初期に建築された雅極まる山荘は、国指定重要文化財建造物。
2017年の6月から、庭園や建物の一部が公開されています。
一条恵観山荘は、後陽成天皇(1586〜1611年)の第九皇子、一条恵観によって営まれた山荘です。
もともとは、京都、西賀茂にあった建物を、昭和になってから鎌倉の地に移築したものです。外から見るとわびた民家風の建物ですが、内部は雅な造作が散りばめられています。かやぶきの下にこけらぶきの屋根がある珍しい2重構造、中は数寄屋造りになっているそうです。
※事前に予約すると、ガイドつきで内部を見学することができます(料金1,000円)
敷地内には、回遊式の庭園が整えられ、美しく紅葉していました。
今年、鎌倉は10月下旬の台風の影響で、樹木が大ダメージを受けました。しかし、一条恵観山荘の庭園は、南側に山があるおかげか木々が美しく保たれています。
赤く色づく椛が多くあり、美しい秋の景色を作っていました。
力強い木の勢いを見せる黒松や、足元を飾る熊笹。飛び石の散策路が苔の中に続きます。すぐ近くを金沢街道が通っているはずなのですが、響くのは小鳥のさえずり。
庭園の中のあずまやは、色づいた木々の枝に囲まれていました。
敷地の南側には、滑川(なめりかわ)の渓流。水の流れにそって、紅葉の小径がしつらえられていました。
公開されてから、初めての紅葉シーズン。まだ知る人も少ないのか、訪れる人はそんなに多くありませんでした。滑川の流れの音を聞きながら小径を歩き、豪華な紅葉を静かに楽しみました。
とても美しく整えられた庭園なので、これから四季を通じて訪れたい場所になりそうです。
一条恵観山荘はこれまでも茶室として使われてきましたが、今後は結婚式の会場としても活用されていくみたいです。山荘の内部を見学できるガイドツアーや、本格式の茶室での茶の湯体験など、さまざまなお楽しみもあるみたい。公開されるのは催事のないときになりますので、お出かけの際はウェブサイトなどでご確認ください。
昨年の夏のことですが、報国寺から少し歩いたあたりの滑川で、網で何かをさらってる小学生の一団に出会いました。「何、捕ってるのー?」と聞いたら、「鮎!」と元気な答えが…。そのときは「鮎は、ちょっと無理じゃない?」と思ったんですが、一条恵観山荘から見た滑川は、水も清くまさに渓流でした。
川底をなめるように流れるから、滑川という名がついたといわれていますが、このあたりの流れの様子は、本当にその通りだなと思いました。