永福寺(ようふくじ)跡が、史跡公園として公開されています。
昭和五六年から約30年にわたって詳しく発掘調査が行われ、その調査結果をもとに建物の基壇や池を復元。2017年の7月に、史跡公園として公開されました。
広々とした谷戸の奥の空間。復元されたのは建物の基壇のみですが、この場所に立つとその大きさを容易に想像することができます。周囲を囲む小高い山の稜線は、永福寺が壮麗さを誇っていた当時とほとんど変わっていないそうです。
永福寺跡について詳しくは、過去の記事『その場に立てば目に浮かぶ、幻の大寺院 永福寺跡』も、どうぞご覧ください。
創建当時は、池が現在は道路になっているあたりまで広がっていたそうです。基壇の上に立って、池越しに眺める山の稜線は、800年前とほぼ同じ。敷地の北側には、谷戸から流れる水を引き込んだ、遣水(やりみず)と呼ばれる人工の小川も再現されています。
この遣水のまわりには、萩や女郎花などの草花が植えられていました(今回行った時にはもう花の盛りは過ぎてしまっていたのですが…)。9月の終わり頃には、道路沿いに彼岸花がたくさん咲いていたし、春にはシロツメクサが一面に咲いていました。これから植生が育っていって、花の名所としても成長してほしいなと思います。
でもやっぱり、建造物がなくて寂しい……と思ったあなた、スマートフォンをお持ちなら先端技術で蘇る永福寺の姿を楽しめますよ
壮麗な大伽藍が蘇るスマートフォンアプリ『AR永福寺』
『AR永福寺』は、鎌倉市と湘南工科大学コンピュータ応用学科 「永福寺プロジェクトチーム」が協力して作成したスマートフォンアプリ(Androidとiosに対応・無料)です。
コンピュータグラフィックで再現された永福寺境内を歩き回れる「お寺を歩く」機能の他に、実際に永福寺跡を訪れた時に楽しめるメニューもあって、これが、なかなか楽しい
「ARカメラ」を起動して、敷地内にあるAR用の看板をカメラで写すと、実際の背景に永福寺の伽藍が浮かび上がります。ちょっとカメラの位置合わせが難しかったりもするんですが、二階建ての大きな建物や池を渡る橋の姿が鮮やかに再現されますよ
「出土品を探す」は、GPSを使った機能です。起動して公園内を歩くと、出土品があった地点でその品々の解説が表示されます。なんだか宝探しみたいで、盛り上がる! スマートフォンの画面を見ながら歩くことになるので、十分にご注意必要ですが、のんびりうろうろ楽しんでください。
中秋の名月の日に、永福寺跡で近隣の人たちを対象にしたお月見の会が催されました。
基壇の上に設置されたスクリーンに、イメージ映像を映写したり、VRゴーグルを使った永福寺再現GCの体験会が行われました。
夕暮れ頃から雲が多くなってきて、名月が姿を現したのはほんの一時だったのですが、史跡公園は秋の虫の声が響いていい雰囲気でした。いつもは午後5時に閉門してしまうので、夕闇の史跡にちょっとどきどき
雲に隠れたお月様に代わって、集まった皆さんの注目を集めたのは、VRゴーグルを使った3DCG体験でした。
小さなお子さんも年配のご婦人も、大興奮
VRゴーグルをつけると360度の視界で映像が楽しめます。永福寺の伽藍が目前に迫り、振り返ったり空を見上げたり、2分ほどの体験時間があっと言う間でした。思わず手を伸ばしたり、体を大きくひねってコードが絡みそうになったりして、スタッフの方々がちょっとあわててました
●2017年10月19日(木)〜12月9日(土)まで、鎌倉歴史文化交流館で、『蘇る永福寺-史跡永福寺跡整備記念-』が開催されます。永福寺の出土品や関連資料が展示されるほか、10月21日(土)・28日(土)、11月18日(土)・25日(土)、12月2日(土)・9日(土)には、『VR永福寺』の体験ができます。
永福寺は、中尊寺や毛越寺などの奥州平泉の大寺院をイメージして建立されたといわれています。そして、平泉の毛越寺は、宇治の平等院鳳凰堂を模して建立した寺院といわれています。現在、建立当時の姿で残っているのはルーツとなった鳳凰堂のみ。
以前、永福寺の発掘調査現場見学会に行ったあと、宇治の平等院鳳凰堂がどうしても見たくなって行ってきました。で、その時、初めて鳳凰堂を目にしたんですが……「あれ? 鳳凰堂、小さい?」って思ってしまったんです。
京都や奈良に行くと、門も伽藍もどこも大きくて「鎌倉って、なんでもこじんまりだわ…」って思っていたんですが……。
実際に資料を見てみたら、鳳凰堂は幅(南北)約47m、永福寺は図面で見ると幅(南北)約100mぐらいあるんですよ! 永福寺、大きいっ! なんだかじわっとうれしい。