鎌倉の秋は、爽やかな風と強い陽射し。涼やかな風が吹き始めても、秋らしい澄みきった空気のせいか昼間の陽射しは肌に強く感じられます。
ここ数年、訪れる人が多くなり混雑が目立ちつつある鎌倉にあって、極楽寺は喧騒を逃れてほっとするひとときを得られるところ。境内では、秋の気配とともに萩の花が咲きます。
茅葺の山門をくぐり境内に入ると、本堂までまっすぐに伸びる木洩れ陽の参道。本堂前は明るく開けていて、こんもりと大きく茂った萩が見えます。
紫色の蝶々の形をした小さな花が、柔らかく枝垂れる枝にたくさん咲いています。
9月の初めに襲来した台風の影響で、少し傷んだ枝も見受けられましたが蕾の数も多く、小さな葉っぱが陽射しにキラキラ 風に枝先が揺れる様子も涼やかです。
極楽寺は、鎌倉がまさに日本の歴史の中心だった頃に興ったお寺です。鎌倉時代の極楽寺は、七堂伽藍・四十九院を備えた大寺院でした。
正元元年(1259年)、鎌倉幕府第二代執権・北条義時の三男・重時が、忍性を開基に迎えて創建しました。
極楽寺に入った忍性は、厳しい修行を続けながら仏の教えの実践として困窮した人々を救うことに力を尽くしました。貧しい人に薬を与える施薬院、身寄りのない子供や年寄りを養う悲田院、病人の世話をする療養院などを建て、救いを求める多くの人々に手を差し伸べます。
現在でも、忍性が活躍した頃に使われていたといわれる石製の製薬鉢と千服茶臼が、本堂前右手に残っています。
彼岸花も咲き始めていました。
ちょっと妖しい雰囲気を持った真っ赤な花が、秋らしい澄んだ陽光を受けて輝きます。透明感のある浅緑の茎がすっと伸びて、植物の力強さを感じます。
お寺の方にお聞きしたところによると、数年前に境内に植えた彼岸花がだんだんと数を増やしてきているそうなんです。境内を注意してみてみると、あちこちで彼岸花の茎が伸びて蕾をつけていました。
極楽寺は、静けさを楽しむこじんまりとしたお寺。
美しい木洩れ陽、海に近いことを思い出させる強い陽射し……参拝して境内を散策した後、山門を出る前に、ぜひもう一度、その風情を振り返ってみてください。
※極楽寺の境内は撮影禁止になっています。今回は許可を頂いて取材しました。
9月の終わりになって、やっと秋の気配を感じられるようになりました。
例年ならお彼岸ごろに見頃になるはずの萩や彼岸花、今年(2019年)は鎌倉中で開花が遅れて、9月下旬になっても咲ききらない様子です。そろそろ秋明菊や紫苑、金木犀が咲き始める頃、開花を待ちながら「もう、大きな台風来ないで!」と祈るばかりです。