毎年、文化の日を含んだ3日間、北鎌倉の円覚寺と建長寺で宝物風入れが行われます。
鎌倉時代に建立され格式も高い二つのお寺、数多くの収蔵している書画や工芸品などの文化財を虫干しをかねて展示公開します。
もともと虫干しが目的なので、円覚寺でも建長寺でも、ほとんどの展示物はガラスケースなどに入れず、そのまま展示されます。展示室もお寺の建築物内なので、畳敷きの部屋の中にずらりと書画の掛け軸がかかり壮観 鎌倉、室町、江戸時代から伝わる重要な文化財を、ものすごく近くで観る事ができます。
※展示室内の写真撮影はできません。
※拝観料とは別に特別拝観料(大人500円、小・中学生300円)が必要です。
北条時宗、足利尊氏、沢庵和尚や一休さんといった歴史の登場人物たちの書を間近に観ると、なんだかその人柄までも伝わってくるような感じがします。古い境内の地図などもあって、現在の様子と思い比べてみると興味深いです。
目録を見ながら、一点ずつていねいに観て回る人、気に入ったものだけをじっくり観ている人、みなさん思い思いに観て回ってます。美術館や博物館とは違って、日常に歴史的な文化財が引き寄せられるような感じがします。
円覚寺
北鎌倉駅からすぐ近くの円覚寺。午前10時、駅の構内からすでに人の流れができていました。
風入れは、大方丈で行われています。入口でもらった『宝物目録』によると、180点の宝物が展示されているそうです!
展示室は3つに分かれていて、廊下にも展示物があったりします。訪れる人は多いのですが、場内は自由に歩き回れます。お庭が眺められるお部屋には、お茶席も設けられていました。
この期間に合わせて国宝の舎利殿が特別公開されていました。ここには、源実朝が宋から願い求めたといわれる「佛牙舎利(ぶつげしゃり/お釈迦様の歯)」が祀られています。
この建物は、鎌倉時代に宋から伝えられた様式を保ち、屋根の勾配や軒の反りの美しさが特徴です。もととなった中国にも、もうほとんど現存していない様式だそうです。
しばらく修復工事をしていた鐘楼も、10月半ばから拝観できるようになりました。とても急な100段以上もある階段の上にあります。この洪鐘(おおがね)も国宝です!
この鐘は、北条貞時が、正安三年(1301年)、名工として知られた鋳物師・物部国光に作らせ寄進したもの。高さ2.6メートルを超える堂々とした姿です。
鐘楼の前にある弁天堂は、まだ修復作業が続くようですが腰掛けて休憩できるスペースができていました。見晴らしのよい席で甘味が楽しめた弁天茶屋は、閉店となっています……なので、階段を上っていく時には、なにか飲み物を持って行くことをおすすめします。
※弁天茶屋は「洪鐘弁天茶屋」としてリニューアルオープンしました!(2016年5月)
建長寺
円覚寺を出たほとんどの人が、建長寺に向かいます。鎌倉街道の細い歩道が人で埋まります。
建長寺は、鎌倉五山第一位の格式。創建以来750年余にわたって保持してきた国宝、重要文化財などの宝物150点が展示されます。
風入れは、豪奢な唐門の奥にある方丈と大庫裡で行われます。ふたつの会場をめぐる中間ぐらいのところに、休憩所が設けられていてお茶とお菓子が用意されていました。この場所で、建長寺発祥のけんちん汁(500円)もいただけます。
展示物が多いので、自分の興味のある物を観ているだけでも思いがけず長く歩きます。
建長寺の展示会場には、ソファや椅子が置かれて一休みできる場所が何ヵ所かあって、ほっと長居してしまいます。休憩しながら目録を見て、また会場に戻ったり、次のお目当てを探したり……あくまでも虫干しの風入れなので、すべてが系統立てて展示されているわけではないので、観たい物は自分で探します。それが風入れの楽しみ方だなぁ…って思います。
風入れは、鎌倉の秋の風物詩。
毎年この頃から椛や銀杏、楓などが色づき始めます。
風入れの期間中は、法話会が行われたり、茶席が設けられたり、ふだんは閑静な境内が賑わいます。
お寺の建物の中を歩き回れるのが楽しい!
一応、順路はありますが行ったり来たり自由にできます。円覚寺も建長寺も、展示室はお寺の建物内なのでほとんど畳敷き。興味のあるものの前に座って観たりもできます(でも正座で!)。
風入れを観に行こうと思ったら、他の場所は回らないつもりの方がいいかと思います。かなり駆け足で回っても、円覚寺と建長寺の両方行ったら午前中から閉門時間の午後4時近くまでかかってしまいます。