名越切通しの奥にある「お猿畠の大切岸(おさるばたけの おおきりぎし)」は小高い山の尾根にそって続く切り立った崖
800m以上も続く崖に沿って、散策路が整備されています。
名越第3切通から、山の尾根に向かう道を登っていくと、やがて視界が開ける展望広場に出ます。その先に、屏風のように切り立った崖が連なっています。
この崖は、鎌倉幕府が三浦一族からの攻撃に備えるために築いた城壁のようなものの遺構だと言われていました。しかし、平成十四年に本格的な発掘調査をしたところ、大規模な石切り場の跡だということがわかりました。鎌倉でさかんに寺院が建立された14世紀ごろ、ここから大量の石材が切り出されていったのです。
ちょっと外国の遺跡みたいな雰囲気もあるこの場所。「お猿畠…」という、なんだかかわいい名前で呼ばれていることが気になります。
文応元年(1260)、『立正安国論』を著した日蓮は、他州派の反感を買って松葉ヶ谷の草庵を焼き討ちされてしまいます。このとき、3匹の白猿が現れて日蓮を導き、このあたりにあった岩窟に逃したという伝承があります。
岩窟があったとされるところは、今も日蓮宗のお寺・法性寺として残っていて、「お猿畠の大切岸」の展望広場から、法性寺境内に祀られた山王権現を背後から望むことができます。
※日蓮を救ったのは、山王権現の白猿と伝えられています。
南に面した崖の下は、日当たりも良くて気持ちのよさそうなところ…お猿さんが、畑を作っているような山深くも静かなところ……ってイメージなのでしょうか?
「お猿畠の大切岸」に向かう散策ルートは、国指定史跡「名越切通」として周囲の景観を保全しながら整備されています。樹木の茂る中に、いにしえの人々の生活を感じる遺構が点在し、歴史の中に踏み入るような趣深い散策路になっています。
「名越切通」の中にある「まんだら堂やぐら群」は、150穴以上のやぐらが確認されている鎌倉有数のやぐら群。初夏(4月下旬から6月初め)、秋(10月下旬から12月中旬)、春(3月上、中旬)に、期間限定で公開されています。
秋の公開時期は、ちょうど紅葉シーズンに重なっています。公開期間中は、ボランティアスタッフの方々から、やぐらの成り立ちや歴史についてのお話を聞くことができます。
「名越切通」は、かつてはもっと道幅も広く、街道として整備された道だったそうです。
江戸時代後期にも修復された形跡があり、中世鎌倉時代から道筋の様子は変化し続けてきたようです。
現在は、かなり近くまで開発が進み住宅地が迫っているものの、切通の道に入ると樹木におおわれ、小鳥のさえずりが聞こえてきます。
何ヶ所か勾配のきついところもありますが、歩きやすく整備された散策路になっています。
切通は、人の手によって切り開かれた道。自然と、古くからの人々の生活とが重ります。
鎌倉も紅葉が始まりました…なんですが、10月の終わりに2つの台風が連続襲来。台風に巻き上げられた塩水で、木々の葉っぱがかなり痛んでいます…。大きなイチョウの木など、海側の枝がすっかり落葉してしまった姿も見かけます。
今年も、鎌倉の紅葉の見頃は11月終盤と12月初めになりそう。谷戸の奥や小さな社寺の境内など、紅葉する木々が守られていそうなところを探そうと思います。
毎年恒例の紅葉ライトアップは、11月下旬~12月上旬です。
長谷寺さんは、昨年もなかなか色づかない木々にいい感じの明かりをあてて、紅葉シーズンを演出してくれました。今年も見に行かなくちゃと思っています。