毎年8月10日は覚園寺の黒地蔵縁日。真夜中、午前零時に始まる縁日です。
▲個人宅の軒に、お地蔵さまの提灯が灯ります。
▲道の脇に小川の流れる細い道。前を行く人がいて、すこし安心。
▲山門の灯りが見えてきます。静かだけど、かなり多くの人が集まっていました。覚園寺は、二階堂の谷戸の奥にあります。鎌倉駅から歩くと40分ぐらいはかかります。
▲山門の灯りを見つけて、ほっとした気持ちになりましたー。鎌倉の街は、駅から少し離れると暗い道が続きます。二階堂のあたりは大きな邸宅が多いので、深夜になると虫の声だけが聞こえてくるような静けさに包まれます。
「今日、ほんとに明けて10日だよね?」と、道すがら何度か確認してしまうほど、しんとした夜の道を進んで行きます。
やがて、覚園寺に近づくにつれて人影が増え、門前に着くと多くの人の気配に熱気を感じるほどでした。
▲まずは愛染明王さまに参拝。欲や煩悩を受け止めてくださる仏さまです。
▲午前1時すぎ頃。人影は闇に紛れて、提灯の灯りだけが浮かんで見えます。覚園寺の境内は森の中。黒々とした木立の陰の中にお堂ややぐらが点在しています。建物の中や案内所、売店などには電気の照明が点いていますが、足元を照らすのはろうそくの灯る灯籠です。
この縁日のご本尊、黒地蔵さまがいらっしゃる地蔵堂のまわりは、五色の布で彩られ、ほの暗い中に明るい色彩を見せていました。読経の声が響き、お線香の薫りが満ちて、現実の世界からふわりと浮き上がってしまうような不思議な感覚にとらわれます。※境内奥は、写真撮影ができません。
▲灯籠の柔らかな光に導かれて、境内を進んで行きます。黒地蔵さまは、とてもとても慈悲深い方で、地獄に堕ちた罪人が炎で責められている様子を見ている事ができず、鬼に変わってお地蔵さま自らが火をたいて責め苦を和らげようとなさいました。
その時、ご自身が火にあぶられたために、身体が黒く煤けてしまったそうです。何度、彩色を施しても、一夜のうちに黒く戻ってしまうのだとか……。
縁日の日には、黒地蔵さまが亡くなった人のもとに、参拝者の思いや願いを運び届けてくださいます。お地蔵さまの手元まで、五色の布で編まれた綱が伸びていて、その端にふれて静かにゆっくりとお参りする人の姿が印象的でした。
参拝の後は、屋台を覗いてみます。
▲パラダイスアレイのかき氷。ラズベリーのフルーティーなソースで大人の上質かき氷でした。井上蒲鉾や凛林(中国料理屋さん)、鎌倉いとこ(きんつば屋さん)、パラダイスアレイ(レンバイ内の人気パン屋さん)など、鎌倉の名店が並んでいました。
お値段も良心的で、もちろん美味しいっ!
夜中のおやつにわくわく、真夜中の、大人の縁日ですよ
お守りや数珠、塗香(ずこう)という粉末のお香なども販売されていて、興味深かったです。
あれこれ食べたり、覗いたり……思い立って、もう一度、参拝に向かったり…午前3時すぎまで境内で過ごしてしまいました。
暗い闇の中にあの世とこの世、さまざまな縁のつながりを感じる縁日です。
縁日というと、屋台がいっぱい並ぶ賑やかな様子をイメージしてしまいますが、覚園寺の黒地蔵縁日は、あの世とこの世を、ひと時つないでくれる…本来の意味での縁日です。
覚園寺は、ふだん決められた時間にお寺の方の案内にしたがって拝観するようになっていますが、縁日の日、8月10日の午前零時から正午までの時間は、自由に参拝することができます。
お地蔵さまや、愛染明王さま、薬師如来さま、十二神将さま、それぞれに向き合ってじっくりとお祈りできる貴重な機会です。
闇の中にろうそくの灯りで浮かぶ十三仏やぐらも、昼間とは違ったダイナミックな景観を見せていました。
縁日が始まる午前零時前には、門前で待つ人もたくさんいて、なかなかの熱気に包まれます。
二階堂方面行きのバスは、鎌倉駅発23時8分(ハイランド行き、岐れ道で下車)が最終です。行きは、駅からタクシーを利用してもいいかもしれません。
▲夜明けには、花が咲く瞬間が見られるかも!縁日には、早い時間に行く方が良いと言われていますが、朝6時から、お粥(1杯500円)が出されるそうなので、朝になってから行くのもいいかもしません。来年は、お粥のある時間に行ってみたいと思っています。朝早くなら、ハスの花も咲いていますね!