扇ガ谷にある海蔵寺は、花の寺として人気があります。
どの季節でも、花があることで知られていますが、春の景色の良さはひとしお! 裏手が源氏山公園なので、お寺の背景に桜が浮かんでいるように咲いていました。
海蔵寺にある花の中でも、四季を通して一番人気なのは海棠なんじゃないでしょうか。本堂の前にある海棠は、枝が豊かに広がり、高さもある名木です。
桜より、ちょっと濃いめのピンクの花が艶やか。桜が散った頃に咲くのがふつうなのですが、今年は花の盛りが重なりました! 桜の咲き始めの頃に天候が良くなかったのが幸いしたようですね。
訪れたほとんどの人が、この海棠の花を写真に納めていました。後ろにある庫裏の藁ぶき屋根も趣があって、なかなかのフォトジェニックぶりですよ。
主役となる海棠を引き立てるように、そこかしこに春の草花が咲いています。
海棠が咲く頃は混み合うときもありますが、ちょっと待っていると必ずスッーと人気が引くことがあるので、のんびりしましょう。人が多くても、周囲を小高い森に囲まれた静かなお寺です。これから初夏にかけては、ウグイスやメジロなどの小鳥たちの声も、お楽しみの一つになります。
境内から谷戸の奥に歩いて2分ぐらい入ったところに、なんとも不思議な雰囲気を持った「十六の井」があります。
山門を入ってすぐに目に入る赤い日傘の下に、拝観料を納める台(無人)があるので、どうぞ、お忘れなく! そこから、本堂に向かって左手に折れて小道を行くと「十六の井」に向かう道になります。
ミニ切り通しといった風情のちょっぴりワイルドな小道を「十六の井⇒」の看板を頼りに進むと、崖にぽっかりと開いた岩屋が出現します。その中を覗くと、「十六の井」の名前どおりに16個の穴から水が湧いています。
本来は井戸ではない……という説があって、「謎の十六穴」ともいわれているそうですよ!
門前には小さな竹林があって、そこに鎌倉十井の一つ「底抜けの井」があります。こちらは、鎌倉時代には本当に井戸として使われ、名水の井戸として知られていたようです。井戸の石碑の後ろにあるのはアジサイですね。きちんと手入れされて、若芽がたくさん出ていました。
海蔵寺は、鎌倉駅から徒歩20分ぐらいかかります。駅から離れたところにポツリとあるお寺というイメージがありますが、行ってみると花以外にも見どころいっぱい。
写真に収めると、ばっちりキマる風景がたくさん見つかるので、カメラ好き男・女子なら、時間をたっぷりとるつもりでお出かけするといいでしょう。
草木がとても健康的に伸び伸びと、かつ、きちんと手入れを受けて育っている様子が印象的なお寺です。
海蔵寺では、お寺としては決まった拝観料を集めていません。「十六の井」の見学に対してだけ、拝観料があるのですが、それも門や受付があって納めるのではなく、無人の納付箱が置いてあるだけです。「十六の井」はそれ自体も面白いし、向かう道も小冒険っぽい楽しさがあります。ぜひ、行って見てください。そして整備された周囲の景観や草木のためにも、拝観料の納付箱をどうぞ、どうぞお見逃しなく!