銘木、古木を多く有する安国論寺の中で、ひときわ印象的な伝説を持つ妙法桜。
遅咲きで、ソメイヨシノが終わった頃に咲き始めます。
▲御小庵の傍らに咲く妙法桜。木漏れ日の中で静かに咲きます。妙法桜は、「日蓮上人が地面についた杖から根付いた」という伝説を持つ桜です。日蓮上人が、この地で『立正安国論』を著したのが文応元年(1260)ですから、この桜は樹齢750年余りということに
白い八重の花が咲くヤマザクラの一種で、明治時代にイチハラトラノオ (市原虎の尾)と名付けられた種と同じものだそうです。枝が横に張り出し、花よりも少し早く若葉が芽吹きます。
▲強風の日が続いて、少し散ってしまいました。
▲八重咲きの真っ白な花です。
▲古木らしい凜とした佇まい。咲く花は初々しく可憐です。
▲根元は苔でおおわれ、落ちる花弁もきれいです。妙法桜は、安国論寺境内、御小庵の隣にあります。古木ですが大きな木でなく、花が葉の内側に咲くので目立ちません。槇の大木の下で奥ゆかしく咲きます。
御小庵は、日蓮上人が『立正安国論』を著したという法窟と渡り廊下でつながる形に建てられたお堂です。御本尊は、日蓮上人が『立正安国論』にとりかかっている姿を写した木造日蓮座像。
庵の傍らに咲く桜を眺めていると、「窟に入るときに、持ってた杖をさしたのかしら?」などと想像もふくらんでしまいます
妙法桜の根元には、朽ちた古い幹の名残りがあります。朽ちかかった根元から枝が伸び、その枝先に若葉が芽吹き、咲く花は白く初々しい。1本の木に、鎌倉時代から今日までの時間の流れが凝縮されたように感じられ、植物の力強さに心を動かされます。
▲濃い緑の槇の葉陰から、明るい緑色がのぞいていました。
妙法桜と同じ頃に見頃となる、源平枝垂れ桃。
この桃も銘木として知られています。今年も華麗に咲いていました!
▲いちだんと源氏の白が優勢な今年の源平枝垂れ桃。
▲八重咲きのこんもり柔らかな花です。白と紅の花が混ざって咲く、源平枝垂れ桃。今年(2018年)は真っ白の花が多く爽やかな印象
全体的にほわっと薄紅がかかったように見えたり、濃い紅の花が目立つ年もあるのですが、今年は、ほんとに、とっても白い!
近くで花を見ると、純白の花弁に紅が差していたりもして、じっくり眺めて楽しめる木です
四季を通じて花や樹木が美しい安国論寺ですが、春から初夏にかけての境内の様子は植物たちの生命感にあふれ、鎌倉ならではの強い陽射しが作る陰影が鮮やかです。
▲本堂前のカエデの芽吹きが生き生きと美しい。
▲参道を飾る山吹。初夏を感じる色彩。
▲小さなカエデの葉っぱがかわいらしい!
▲参道からのぞく景色は、春夏秋冬ことなる趣があります。
鎌倉時代には、歴史的な出来事の舞台となった松葉ヶ谷。
安国論寺には、今でも時の流れを越えた物語が感じられます。
安国論寺の妙法桜は、十返舎一九の諸国道中記『方言修行(むだしゅぎょう) 金草鞋(かねのわらじ)』の鎌倉編(天保四年(1833)刊)にも出てきます。『金草鞋』は、江戸っ子に大人気の観光ガイドブックで、江戸末期のベストセラー。その中で安国論寺は「金のご利益があった…」と書かれているんですよ! 詳しくはこちらをご注目!!→お江戸の鎌倉
鎌倉中が花盛りの季節となりました
▲日向ぼっこしながら羽繕い中のカモさん。見てるだけで気持ちいい!商店街にはツバメたちが飛び回り、住宅街ではシジュウカラがさえずり、緑深い社寺ではウグイスの歌声が響きます。鎌倉は海に近い街なので、ちょっと注意するとあちこちに川筋があって、カモやサギの姿は珍しくありません。青い宝石と呼ばれるカワセミの姿が見つけられたら、とってもラッキー! 水面にキラリと鮮やかなブルーが見えたら、きっとカワセミです
川面を眺めると、大きなコイが泳いでいたりカメがいたり! 植物も動物も、日増しに暖かくなり陽射しが強くなっていくのを楽しんでいるようです。
鎌倉を散策するには、帽子や日傘、日焼け止めが欠かせないシーズンになりました!