三月の美鈴のお菓子は、「わらび餅」。
紺絣柄の箱に、緑と黄色の紐掛けがしてあって「3月だ、もう春だ!」と小さくハッとしました。中には、きっちり四角のわらび餅が、びっちりときな粉で覆われていてなかなかの迫力です。
透明感があってぷるぷるという、よくあるわらび餅とは異なった印象ですよね?
それもそのはず、美鈴の「わらび餅」は、わらび粉を使わないで作ったわらび餅なんです!
きな粉を落とさないように、そーっと箸で取り出しました。とてもとても柔らかくて、皿の上でだんだんと形が丸く沈んでいくような柔らかさなんです。
ものすごく弾力があって、切り分けるのが難しいほど。なのに、口に入るとじんわり溶けて、小豆の香りが爽やかに残ります。まわりのきな粉は、粉っぽさを全く感じないほど粒子が細かく滑らか。豆らしい風味がしっかりしてるので、たっぷりまぶしたり、わざとつけないで食べたりすると変化があって楽しいです。
美鈴の「わらび餅」はわらび粉を使わず、白玉粉と砂糖を練り上げた求肥に、小倉漉し餡を加えて作っているのだそうです。材料も作り方も、わらび餅と全然違う…え? それじゃわらび餅もどきなの? と、最初、思ってしまっていろいろ調べてみました。
実際には広く “わらび餅” と呼ばれているほとんどのものは、サツマイモなどの澱粉を使って作られているそうです。本物のワラビの根から作るわらび粉は、製法も難しく約10kgのワラビの根から、100gも取れないのだとか。なので純粋なわらび粉は高価で、日本国内で作られているものは希少。
お店で売られているわらび餅粉も、原料を見てみたら甘藷(サツマイモ)澱粉がほとんどで、本わらび粉が “入ってる” ものは、ぐっとお値段高めになっていました!
わらび餅ってもともとが、本物のわらび粉の代わりに使えるものを工夫して作っているんですね。
美鈴の「わらび餅」は、「わらび餅」という “お題” のもとに生まれた和菓子。
春のお菓子として堂々の存在感です。
わらび粉ナシのわらび餅って、すっごい挑戦的だと思います! 弾力や色合いを本物のわらび粉のわらび餅に近づけようと工夫を重ねた結果、わらび粉を使わなかったっていうのが面白いですよね!
わらび餅って夏っぽいイメージもありますが、本来、わらび粉(本物のラワビの根を使ったもの)は早春に採れるものなので、美鈴では春・三月のお菓子として登場してるんですよ。
なんとも職人らしい気概を感じます。
3月の暦に変わったら、いきなり風が温くなってきたように感じます。梅はもう盛り、桜もつぼみの存在を感じられるぐらいに、枝の先がほんのり色づいてみえますよ。これから花の季節が続き、鎌倉も賑やかになっていきます。